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2022.12.27
  • ストーリー

装置製造に特化した工場をー新。建設に携わった二人の想いが詰まった、構想から竣工までの舞台裏

住友重機械イオンテクノロジー株式会社(以下、SMIT)は2022年10月、イオン注入装置を製造する新工場を竣工しました。今回は、新工場の建設に向けて奔走してきた環境設備グループの紀伊 雅人と神野 寛太の二人に、新工場が完成するまでの道のりと建設に携わって感じた想いを語ってもらいました。

世界の半導体需要に向けて。新工場の建設に至った目的とは

まずは、簡単に自己紹介をお願いします。


紀伊「私はもともと開発部に所属しており、電気設計を主に携わってきました。5年前に環境設備グループに異動となってからは、4年前よりグループリーダーを任されるようになりました。環境設備グループの担当業務は愛媛事業所の環境活動(EMSの維持・改善・管理活動)の事務局、愛媛事業所の施設(建物・外構・工場設備)管理ですので、新工場の建設においても事務局的な役割に取り組んできました」

神野「私は2020年4月に経験者採用で入社しました。子どもが入園するタイミングで地元である愛媛県に戻りたいと考えていたのですが、前職ではトイレメーカーで工場の設備を管理していたこともあり、これまでの資格を活かせる工場に惹かれてSMITへの入社を決めました」


新工場建設の背景について教えてください。


紀伊「SMITのイオン注入装置の主要マーケットである半導体やイメージセンサーは、電気自動車の普及、自動運転技術の向上などによる需要増加により、当面は高い成長率を維持すると予想されています。世界の半導体需要に対して、今後もさらなる事業拡大ならび生産および物流の効率化を図るため、新工場の建設を決定しました。その後、2019年10月から建設に向けての検討を開始し、2020年の1月ごろに構想ができ上がりました」

生産性を向上するために。将来への展望を見据えた生産動線

▲2F組立エリア室

新工場の建設が決まり、はじめに取り組んだことはなんでしょうか?


紀伊「まずは、2022年12月現在の建屋の問題点や改善点、各職場の面積、設備仕様といった現状把握と分析を行いました。私は建築物や建築設備の知識をほとんど持っていなかったため、新工場のイメージがある程度固まった後、建築仕様や装置に必要な用力などの設備仕様をスムーズに決められるように準備を進めていました」

神野「予算や建設計画が承認された2020年9月ころ、私もプロジェクトメンバーに加わり、主に現場を任せてもらえるようになりました。これまで工場の建設に携わった経験もなかったため、はじめのころは不安でいっぱいでしたね。

新工場の建築建設を請け負ったフジタ・大和ハウス工業特定建設共同企業体(以下、JV)の皆さんに建設に関するさまざまなことを協議しながら、目の前のことを一つずつクリアしていく日々でした。普段の業務の中でも、これまでなかったものが図面から形になっていくことにやりがいを感じ、新工場ができ上がっていく姿を現場で見られることはとても楽しかったです」


新工場のコンセプトを教えてください。


紀伊「コンセプトの一つは生産動線の一本化です。既存棟では製造現場が分散していたり、離れていたりすることもあり、同じ通路を行ったり来たりで決して効率の良い動線となっていません。既存棟の状況を踏まえ、新棟では部品の入荷から装置の組み立て、そして出荷までを効率良く行えるように生産の動線を一本化することとしました。

これを実現するために、建設コストが上がることになりましたが、重量物を扱う組立テスト室を2階に配置しました。2Fにすることにより、柱の数を1Fの1/3に抑えることができ、また、消防と協議し、大空間の組立テスト室を作り上げることができました。さらに、2Fに直接出荷するためにデッキ・スロープで接続しましたが、これは将来増築する建物をこのデッキにて接続することを想定したものです。まだ増築の計画はありませんが、SMITの将来の成長の想いが込められています。

これまでは利便性を重視して増築を繰り返してきましたが、そのデメリットである建築物の陳腐化がいろいろな場面で顕在化し、今回の新棟がその脱却の時期と考えました。なぜ、既存棟に接続しなかったなど、多くの意見がありましたが、古い建物の影響をうけることがない製造部門の独立した建物を建設し、生産性の向上を図ることが、今回最も重要な目的だと思っています」

使用者の想いを実現させる。担当者それぞれの取り組みとこだわり

▲食堂

建設に関して、こだわったところはありますか?


紀伊「使用者の要求事項を簡単にあきらめなかったことです。途中で予算大幅超過の可能性がありましたが、コストを上げず機能確保を行える代替え手段の模索等を常に行い、当初の構想を貫き、形にしていきました。その一つが床です。既存棟はいくら修繕してもすぐに塗床がボロボロになってしまうので、今回はJVと何度も打ち合わせを行い、耐久性の強い塗床材へと変更しました。

また、CO2削減が大きな課題となっていますが、新工場がフル操業を始めるとCO2排出量がこれまでの2.5倍以上になることが予想されます。そこで少しでもCO2排出量を増やさないため、建物の断熱性能と空調システムの省エネ化を行っています。この二つについては、試算が難しく、これから検証していくので今後に注目しています」

神野「私は食堂や休憩室の内装をすべて任せてもらったので、そこにこだわりと遊び心を詰め込みました。内装を考える際に一番意識したことは、職場と休憩室のオンとオフの切り替えができるように、ガラッと雰囲気を変えたことです。食堂は昼食時だけでなく、休憩や打ち合わせなどでも利用してもらえるよう都会のオフィスをイメージしていて、使用する家具も実際にショールームを見に行って選びました。

休憩室の内装は西条市内の工務店にお願いして、西条市の良いところである山や海をイメージしたくつろげる場所にしてもらっています。西条市の雰囲気を感じられる空間になっていると思いますので、ぜひたくさんの方に見てもらいたいですね」


建設に携わって良かったことを教えてください。


紀伊「逃げ出したくなるような荷の重い仕事を担当させてもらったことです。多くの人と関わり、私に何が求められているか、今さらながら毎日学ぶことがたくさんありました。このような経験はなかなかさせてもらえないと思います」

神野「プロジェクトに加わったのが入社直後でしたが、新工場の建設を担当したことで社内の人とも関わる機会が増えた上に、自身を知ってもらえたことでその他の業務も行いやすくなりました。また、建設の過程で近隣のSHIグループ関係会社と連絡を取り合うことも多くなり、交流が深まりました。お互いに作っているものは違いますが、刺激を受けることも多く、いい関係性ができたことも良かったです」

立派な工場へと育てていきたい。竣工して感じたこと


新工場が完成したときの心境はどうでしたか?


紀伊「完成したときの関係者への感謝の気持ちがとても大きかったです。SMIT独特のスペックをもった大きな建築物を短期間で完成した上、その過程での議論や話し合いはいくらでも受け付けてもらえました。また、このプロジェクトはちょうどコロナ過で進行していましたが、その影響で建設工事が止まることもなく、常にオンタイムであったことも、関係者の皆様に強い意識を持って取り組んでもらえたおかげだと思っています」

神野「JVからの引き渡し時に、鍵や図面などの書類を受け取って確認したところ、建物の大きさや規模感を改めて思い知りました。2022年10月26日に関係者や来賓を招いて竣工式と開所式を執り行うと、皆さん空間の広さに驚かれていましたね。中央通路もかなり広さがあるため、『ショッピングモールみたい』という声も上がりました(笑)。個人的には、食堂と休憩室の内装が完成した姿を見たときに、達成感と実感が湧いてきました」


最後になりますが、新工場の今後について教えてください。


紀伊「新工場は完成しましたが、すでに改善課題はいくつもあります。これから立派な工場になるようにしっかりと育てていかないと、という気持ちが強いですね。建設に至った目的をしっかりと果たせるよう、引き続き新工場の改善や日常管理に取り組みたいと思います」

神野「今後同じようなプロジェクトが立ち上がったときに、スムーズに実行できるように今回のノウハウを残しておくなど、今からでもできることは準備をしておこうと思っています。また、これからは二つの工場を管理していくことになるので、新工場の管理体制を整えていく必要もあります。環境設備グループとしてやることはまだたくさんありますが、今後新工場がどのように活用されていくのか楽しみにしています」

 
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